アップグレード計画 UPGRADE PROJECT

01 OUTLINE 概要 / 所長ご挨拶

広島大学の放射光施設HiSOR(Research Institute for Synchrotron Radiation Science)は、世界的にも希少な紫外線域に特化した小型放射光源として、長年にわたり物質科学および生命科学の最前線を支えてきました。電子のエネルギー・波数・スピンを同時に測定できるスピン角度分解光電子分光(SARPES)や、生体高分子の構造や機能発現機構を解明する円二色性吸収分光(CD測定)などの分野において世界を先導し、超伝導、スピントロニクス、生命分子科学の発展に大きく貢献してきました。

近年、社会的には「ゲームチェンジをもたらす新しい機能性材料」や「創薬に直結する生体分子の動的構造解析」への要請が一層高まっています。広島大学においても、WPI「キラルノット超物質拠点」やJ-PEAKS採択プロジェクトに代表されるように、量子物質科学と生命科学を横断する先端研究の潮流は明確です。こうした研究を実現するためには、時間的に安定した高輝度放射光を用いた高速かつ高精度な計測が不可欠です。
しかしながら、HiSORは稼働開始から25年以上が経過しており、放射光科学はすでに「より明るく、より精密に、より速く」を追求する新世代光源の時代へと移行しています。とりわけ、物質や生命が変化する瞬間を捉える計測という次世代研究ニーズに応えるためには、既存光源の延命ではなく、光源そのものの抜本的な更新が必要です。

このような背景のもと構想されたのがHiSOR-II計画です。本計画では、電子蓄積リングを全面的に更新し、放射光の輝度を約100倍に向上させるとともに、蓄積電流を一定に保つトップアップ運転を実現します。これにより放射光強度の安定性が飛躍的に向上し、従来は困難であった「物質中で起こる瞬間的な電子状態変化」や「生命分子が機能するその瞬間」を高精度かつ再現性良く観測することが可能となります。
さらにHiSOR-IIでは、微弱な信号を高感度かつ高速に捉える次世代計測システムの開発や、強磁場・極低温といった極限環境下での測定技術の高度化に注力します。大型放射光施設とは異なり、HiSOR-IIは小回りのきく大学拠点型放射光施設として、ビームラインや計測系の改良、新規測定手法の試行、測定条件の最適化を短いサイクルで実施できる特長を有しています。このような環境のもとで、学生や若手研究者は、最先端の計測技術を実践的に学ぶと同時に、光源・計測系・データ解析を一体として理解し、自ら測定手法を設計・改良できる能力を身につけることができ、放射光計測を担う次世代人材の育成に直結します。
HiSOR-IIは、基礎から応用までの多様な研究ニーズに応える新たな研究・開発環境を提供すると同時に、次世代の放射光科学を担う実践的かつ自立した人材を育成する教育研究基盤として機能します。本計画を通じて、科学・技術・人材が相互に育ち合う「共創の場」を形成し、我が国の放射光科学および量子・生命機能研究を持続的に牽引する拠点の構築を目指します。

所長 島田 賢也

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02 Activity 活動履歴

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