HiSORセミナー
日時 2025年11月25日 (火) 10:00 ~ 12:00
場所 広島大学放射光科学研究所 2階 セミナー室
刺激応答性体積相転移ゲルが魅せる特徴的な分子拡散挙動と新しい光物性
講師 浜崎 亜富
(信州大学学術研究院(理学系))
外から加えられた刺激で物質の色が可逆的に変わる現象を「クロミズム」と呼ぶ。一般的には分子の構造を変化させることで色を変えることが多いが、私たちは物質の凝集と分散を制御することでクロミズムを発現させることに取り組んでいる。体積相転移ゲルの膨潤と収縮の状態は、ゲル内部の水分量のコントロールに等しく、ゲル内部に取り込んだ溶質(分散媒や分散質ではない)の溶解度を可逆的に変化させることができる。その結果、ゲル内に取り込まれたピレンやペリレンなどの発光性分子の分散と凝集を促し、モノマー発光とエキシマ-発光が切り替わる。従来は綿密な分子設計を必要とした蛍光波長の可逆的変化を、既知の分子をゲルに取り込むだけで実現したことになる。分子間距離を任意に変えることがドライビングフォースであり、エネルギー移動や電荷移動を起こす異種分子を共存させることで、さらに多くのバリエーションの発光性クロミズムを実現できている。当日は、相分離クロミズムと名付けたこの現象の詳細を紹介する。
反磁性物質の磁場効果
講師 武内 裕香
(室蘭工業大学もの創造系領域電気電子工学ユニット)
世の中に存在する様々な物質は、その磁気的性質によって大きく強磁性体、常磁性体、反磁性体に分類されます。このうち、水、有機高分子、セラミックス、タンパク質 など反磁性体に分類される物質は、通常「非磁性体」として認識されがちですが、超電導磁石を用いた強磁場下では、明確にその影響を受けることが知られています。反磁性体の磁場効果は、原子・分子軌道に対で存在する電子の軌道角運動量に由来する、外部磁場を打ち消すように誘起される電子の運動 に起因します。このため、反磁性体は外部磁場と逆向きに磁化される性質を持ち、磁化率は負の値となります。また、反磁性体が勾配磁場中に置かれると、磁場の弱い方向に動く反発する磁気力が発生します。さらに、物質が異方性を持つ場合、磁場が印加されると、微小のエネルギー差を利用しエネルギーが最小となる方向に磁気トルクが作用し、物質が一定方向に配向します。この非接触で物質を配向制御することが可能な磁場配向技術 は、材料の結晶構造解析や機能性材料の開発などの分野で応用が期待されています。本講演では、反磁性物質の磁場効果と、超電導磁石を用いない 低磁場での磁場配向に関する結果について紹介します。
問合せ先 松尾光一、出田真一郎(放射光科学研究所)











