HiSORセミナー
Linear Dichroism測定でみるDNA/Protein複合体の構造
日時 2025年9月19日 (金) 15:00-16:00
場所 放射光科学研究所 2階 セミナー室
講師 TAKAHASHI Masayuki
(東京科学大学)
Linear Dichroism (LD)は偏光を用いた分光測定で、タンパク質フィラメントやDNAおよびDNAとタンパク質の複合体の構造分析に応用されている。結晶構造分析が困難な螺旋フィラメントの分析に役立っている。原理は光が波であり、発色団(Chromophore)が一定の方向に振幅する偏光のみを吸光することを利用し、フィラメント軸に平行に振幅する偏光と直角に振幅する偏光の吸光の差を測定することで、発色団のフィラメント軸に対する向きを決定する。例えばDNA塩基のtiltやrollの角度を決定できる。なお測定にはサンプル分子を一定方向に配向する必要がある。そのために強い電場やCouette cellが用いられるが、配向は完全でなく、シグナル強度は配向の度合いに比例する。なお配向の度合いは、フィラメントの長さ、フレキシビリティ、折れ曲がりに影響される。
このことを利用してわたくしたちは、転写制御タンパク質CRPやDNA損傷を修復するUvrABCタンパク質がDNAを大きく折り曲げていることを証明した。 私たちさらに相同DNA組換えを行う、RecAとRad51タンパク質とDNAの複合体フィラメントの構造分析行った。これらのタンパク質は単鎖DNAに協同的に結合し螺旋フィラメントを形成した後、最初のDNAと相同な塩基配列を持つDNAを結合し、二本のDNA間での鎖交換を行う。タンパク質からのシグナルとDNAからのシグナルを区別するため、吸光スペクトルの異なるDNAアナログやトリプトファン残基やチロシン残基を吸光の少ないヒスチジンやフェニルアラニンに置換したタンパク質を用いて実験を行い、DNA塩基やタンパク質のそれぞれの残基の向きを決定し、フィラメントの分子モデルを構築した。
問合せ先 松尾光一、出田真一郎(放射光科学研究所)











