セミナー・シンポジウム

HiSORセミナー

バンドのスピン縮重

日時 2024年12月9日 (月) 13:30~15:00
場所 広島大学放射光科学研究所 2階 セミナー室
講師 獅子堂 達也
(ウィスコンシン大学ミルウォーキー校 (アメリカ合衆国))

これまで、電子バンドにおけるスピン分裂は多くの注目を集めてきた。特に、反転対称性の破れた非磁性物質に見られるラシュバ(Rashba)スピン分裂や、対称性の低い反強磁性体におけるバンドスピン分裂が広く議論されている。本講演では、これらの従来の研究から視点を変え、スピン縮重を有するバンドに焦点を当て、最近の我々の研究結果を紹介したい。

具体的には、時間反転対称性と空間反転対称性の両方を持つ系において、全ての運動量においてクラマース縮重(Kramers degeneracy)が現れることが知られている。この二重縮重は通常、外部磁場を加えることで解消される。しかし、非共形 (nonsymmorphic)な対称性を持ち、スピン軌道相互作用が強い系では、Zeeman効果による磁場との結合が起こらず、スピン縮重が維持される特異な電子状態が存在することが明らかになった [1-3]。

本講演ではこの新たなスピン縮重メカニズムについて詳細に論じ、さらにその物理的影響として、超伝導状態の対破壊や磁気秩序に対する不安定性についても議論を行う予定である。

[1] Nonsymmorphic symmetry and field-driven odd-parity pairing in CeRh2As2, D. C. Cavanagh et al., Phys. Rev. B 105, L020505 (2022).
[2] Superconductivity of anomalous pseudospin in nonsymmorphic materials, Han Gyeol Suh et al., Phys. Rev. Res. 5, 033204 (2023).
[3] Spin–orbit enabled unconventional Stoner magnetism, Y. Yu, et al., PNAS, 121, e2411038 (2024).

問合せ先 奥田太一、出田真一郎(放射光科学研究所)