HiSORセミナー

赤外放射光を利用するビームラインの構造と利用動向

日時 2025年7月18日 (金) 15:00 - 17:00
場所 放射光科学研究所 2階 セミナー室
講師 池本 夕佳
(高輝度光科学研究センター)

赤外分光は、赤外光と物質の相互作用を通じて、組成や結合状態に関する情報が得られるほか、電子の応答に着目して低エネルギーの電子状態も調べることができる手法である。手法の適応範囲が広く、物理・化学・生物など広い分野の研究に利用されている。分光用の光源としては、グローバーランプなどの熱輻射光源の利用が一般的だが、放射光に含まれる赤外線(以後。赤外放射光と表記)は、広帯域をカバーすることに加えて高輝度の特性があり、これまで主として顕微分光に利用されてきた。赤外放射光は偏向電磁石から取り出すが、エネルギーの高いX線や軟X線の光と比較して発散角が大きいため、十分なフラックスを得るためには、初段のミラーの立体角を大きくする必要がある。赤外光は金ミラーなどで光路を制御できることは利点の一つだが、昨今のビームライン設計では、光の強度や特性を維持するため、できるだけ枚数を抑えて装置に導くことが重要視されている。市販の赤外分光装置の性能が高いため、これとの棲み分けを図るため、さまざまな試料環境の整備や、低波数利用などの工夫を施している。また昨今は、波長よりも小さい空間分解を達成するnano-FTIRの活用も進んでいる。

問合せ先 松尾光一、宮本幸治、出田真一郎(放射光科学研究所)