セミナー・シンポジウム

HiSORセミナー

フェムト秒時間分解光電子顕微鏡による半導体表面のキャリアダイナミクス

日時 2019年8月26日 (月) 13:30-15:00
場所 放射光科学研究センター 2階 セミナー室
講師 福本 恵紀
(高エネルギー加速器研究機構 物質造科学所)

光電子分光(PES)は、材料の状態密度(DOS)を研究する最も一般的な手法のひとつである。しかし、半導体における伝導帯 (CB)電子の密度は内殻電子の密度は内殻電子の密度よりも5〜10桁程度小さいため、従来の光子エネルギー固定の光源による PESでは、その(動的)特性を検出することは困難である。そこで、UV領域で光子エネルギーが連続的に可変できる光源を備えたPESを提案する。これにより、内殻電子を光電子放出することなくCBのDOSを高いS/N比で取得できる。また、ほとんどの材料で3~5eVの範囲にあるCB電子のイオン化エネルギーも測定可能となる。フェムト秒パルスレーザを光源とすることで、このエネルギー範囲で高いフラックスの光を供給することは比較的容易であり、ポンプ-プローブ法を利用する時間分解測定も可能となる。さらに、検出器として光電子顕微鏡を使用することで、50nmの空間分解能が達成される。これらを組み合わせることで、CB電子のダイナミクスを時間、空間、エネルギー分解能で観察することが可能となる。この方法を Charge Density Contrast Photoemissoin electron microscopy (CDC-PEEM)と名づけた。

本講演では、これまでに得られた成果を参照し[1-5]、CDC-PEEMを紹介する。さらに、最近の適用例として、トポロジカル絶縁体であるBi2Se3と有機太陽電池材料であるC60とペンタセンのヘテロ接合における電子ダイナミクスの観測結果を紹介する。

[1] Fukumoto et al., Appl. Phys. Lett. 104, 53117 (2014).
[2] Fukumoto et al., Rev. Sci. Instrum. 85, 83705 (2014)
[3] Fukumoto et al., Appl. Phys. Exp. 8, 101201 (2015).
[4] Fukumoto et al., Carbon 124, 49 (2017).
[5] Fukumoto et al., Appl. Phys. Lett. (2019) accepted.

問合せ先 奥田太一(放射光科学研究センター)