セミナー・シンポジウム

HiSORセミナー

円二色性と熱測定によるタンパク質凝集過程の観測

日時 2017年6月2日 (金) 15:00~

場所 放射光科学研究センター 2階 セミナー室
講師 神山 匡
(近畿大学 理工学部)

 タンパク質は規則正しい立体構造を持ち機能を有する天然状態や、熱や圧力、pH、添加物などの外的要因によって規則正しい構造が崩れ機能を失った変性状態が存在する。天然状態と変性状態の転移は一般に可逆的であり、多くの熱力学的な研究がなされているが、不可逆的な転移であるタンパク質の凝集化に関する熱力学的メカニズムは未だ不明な点が多い。ある種のタンパク質の凝集体形成は生体内においてアミロイドーシスの原因となることから、その形成機構の解明や抑制が課題となっている。タンパク質の構造変化は円二色性(CD)などの分光学的な手法で測定することが一般的であるが、タンパク質の凝集は沈殿による光の散乱や濃度変化を生じるため、測定や定量的な解析を阻害することがある。一方、熱測定や熱分析は凝集変化を含めたセル内の全ての反応を検出することから、分光学的手法と組み合わせることによって凝集体形成を観測する有効な手段となる。我々はこれまで、凝集誘導物質として1,4-Dioxaneを使用することで、一般的な球状タンパク質が加熱によって数種の凝集体を形成することを明らかにし、その熱力学的特性を示してきた。本講演ではいくつかのタンパク質を例に、凝集体形成過程の熱量測定、体積的挙動および分光学的な構造変化について紹介する。

問合せ先 松尾光一(放射光科学研究センター)