広島大学放射光科学研究センター
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 多層膜単結晶からX線生成

広島大学  

多層膜構造にシリコン単結晶に電子を入射することにより、放射されるX線の強度を測定した。得られたX線の強度は、同じ厚さの単層結晶よりに比べ増大していることが分かった。この結果は結晶を用いた新しいX線源の実用可能性を示唆するものである。


概要

 結晶に電子を入射すると、特定の角度に単色の硬X線が放射されることがしられており、パラメトリックX線と呼ばれる。広島大学のグループはこの原理を用いた実用的X線源に向けた研究を行ってきた。今回、広島大学産学連携センターの超高速電子周回装置において、厚さ16ミクロンのシリコン結晶を重ねた標的に電子線を照射し、生成されるX線の強度を調べたところ、同じ厚さの単層結晶に比べ、強いX線が生成されることが分かった。


研究の背景及び目的
 X線は医療、工業の非常に広い分野で応用されていることは言うまでもない。特に、単色の硬X線は、厚い物質の非破壊検査や、医療現場における診断に有用である。しかし、現在広く使われている、X線発生装置では、単色のX線を生成することできない。放射光施設を用いればこれは可能であるが、硬X線の生成は大型施設でのみ可能であり、応用のために広く普及させることは不可能である
 本研究で着目しているパラメトリックX線は、電子を結晶に入射すると、特定の角度に単色のX線が生成される現象である。白色光を結晶中にいれると、ブラッグ反射と言う現象により、特定の角度で単色のX線が観測されることが知られているが、白色光の代わりに電子を入射しても同様の現象がおこる。この場合、X線のエネルギーは電子と結晶面の角度で決まり、入射電子のエネルギーにはよらないしたがって、この原理を用いると、病院等の一般の施設でも導入可能な程度の小規模な加速器で単色の硬X線を生成可能である。その反面、その生成量が小さく、実用的な強度のX線を生成することが課題である。
 本研究では、薄い結晶の多層に重ねた量的を作成した。電子が結晶等の誘電体と真空(または空気)中との境界を通過するときには、遷移放射と呼ばれる光がでる。通常この光は電子の方向とほぼ同じ向きにでるが、図に示すように結晶を配置すると、パラメトリックX線と同じ方向に回折させることができる。また結晶膜の間の距離を観測したいX線の波長の整数倍とすると、各膜からのX線が強め合うことが期待される。これは回折共鳴遷移放射と呼ばれる。このように、パラメトリックX線と回折共鳴遷移放射が同じエネルギーのX線で起こるように、多層結晶膜を設計することにより、X線強度の増大を目指した。


図 1  結晶多層膜によるX線生成の原理
結晶に電子を入射すると、パラメトリックX線が発生する。同時に遷移放射が後ろの結晶によって回折され、パラメトリックX線と同じ方向に出る。このとき、結晶膜の間隔をX線の波長に合わせておくと、遷移放射が共鳴して強めあうことが期待される。


図 2 実験セットアップ
電子周回装置の内部標的部に結晶を設置した。結晶は遠隔操作で角度や位置が調整できるテーブルの上に置いている。

実験の概要と結果
 実験は、超高速電子周回装置(REFER)の内部標的を用いて行った。電子線取り出しラインで行った。
 図3は、は結晶軸と電子の間の角度を変えながらX線の強度を測定したものである。16ミクロンの10層からなる多層膜結晶からのX線の方が、同じ厚さの単層結晶より強度が強いことが分かる。強度の違いを検討した結果、その違いは共鳴遷移放射から予想されるものよりも小さいことが分かった。しかし単純な多層枚数の加算よりも大きく、完全ではないが、共鳴遷移放射等の寄与があると考えられ、今後の検討が待たれる。
 この結果はX線強度増大に関して、パラメトリックX線及び共鳴回折遷移放射を用いた方法が有効であることを示し、実用化に向けた開発に向けた開発に期待をもたらすものである。




K. Chouffani, M. Yu. Andreyashkin, I. Endo, J. Masuda, T. Takahashi, Y. Takashima, Parametric X-radiation and diffracted transition radiation at REFER electron ring, Nucle. Instr.,and Meth. B173 241-252 (2001)



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